今シーズンからコーチを兼任するプロ21年目の平野佳寿投手。「まずは選手として一軍で投げられる身体をつくることが一番です」。宮崎春季キャンプでは自身の調整を最優先にしながらも、コーチとして投手陣に惜しみなく助言を送ります。二つの役割と向き合う現在の心境や今シーズンへの思いについて話を聞きました。
◆壊れるぐらい投げたい
――「兼任コーチ」という、これまでと違った立場での春季キャンプです。今回のキャンプはどのように臨んでいますか?
コーチとしてももちろんですが、まずは選手としてしっかり一軍で投げられるように、身体づくりを軸にしています。
選手としてはもうやるしかないと思っています。今シーズンは身体が壊れるぐらいまで投げようかと思っています。
――それだけ今シーズンにかける思いが強いということですね。
はい。言い方としては良くないかもしれませんが、それぐらいしっかり投げないともう抑えられる感じじゃないと思っています。
余力を残して抑えられるほど甘い世界ではないと、この一年で感じました。
もう壊れてもいい。そういう気持ちでしっかり身体をつくって、最初からフルスロットルでやっていかないとダメだと思っています。
――手応えとしてはいかがですか?
まだまだこれからです。
思い描いているのは、足元から身体、指先へとしっかり力が伝わって、ビシッと投げるイメージです。
当たり前のことなんですがね。しっかり足腰をつくって投げていかないといけないと思います。
◆1試合でも多く一軍の舞台で
――今シーズンの目標はどんなところになりますか?
やっぱりこの2年間ほとんど上で投げられていなかったんで、1試合でも多く一軍で投げるのが目標です。
しっかり一軍の戦力になりたいです。
――1000奪三振までもうあと1です。
はい。あと1個なんで。まぁ、取れればいいかなと思って投げます。
――これまでNPB通算250セーブや日米通算200セーブ・200ホールドなど数々の記録を積み重ねてきましたが、いつも「記録は後からついてくるもの」と話しています。その考えは変わりませんか?
そうなんです。記録を自分から狙おうとは全く思っていないですし、あと何個で達成とか、そういうのも一切数えたことがないです。
長くプレーしていたら自然と結果もついてくるものなんでね。
いつも記者の皆さんからのインタビューで「もうすぐ達成ですね」と言われて、そこで「あ、そうなんだな」と思います。
意識しすぎたくないので知りたくない気持ちもありますが、気付かされたからには少し意識せざるを得ませんね。
◆還元していきたい
――キャンプの練習が終わった後も、コーチミーティングに入ってコーチ業をされています。大変ではないですか?
いや、そこまで大変というわけではないですよ。まずは第一に選手としてやらせてもらっていますしね。
ミーティングに参加するようになったことで、コーチの方々がどれだけ選手一人一人のことを考えていたかがよくわかりました。
――これまでと比べて少し見え方が変わってきたということでしょうか。
そうですね。例えば、今日は寒いからスケジュールを変えよう、練習場所をここにしよう、というのはもちろんで、この選手は疲れがあるようだからこちらに回そうとか、この選手には今はこういう練習をさせよう、とかね。
本当に細かいところまで選手のことを考えてくれています。これだけ僕らのことを考えてくれていたんだな、と本当にありがたく思いました。
――そういったコーチ陣の工夫や気遣いについて、選手に少し知ってもらいたい思いはありますか?
いや、選手はそんなことは一切考えなくていいと思うんです。
選手は自分のプレーに集中してガンガン取り組んでいくのが一番だと思います。
「今日ここでやるよ」と言われたら「わかりました。ここで精一杯やります」。これでいい。実際に僕もそうやってきましたしね。
たまたま僕はコーチ兼任だから目の当たりにしただけだと思っています。
――コーチとしての視点が選手として生かされる部分は何かありますか?
どうですかね。コーチになったから野球がどうこうというのは全く何も変わりがないですね。
ただ、これだけコーチ陣に支えられていたからこそ、僕はここまでやってこられたんで、次は還元していくことも大事だなというのを一番感じています。
――今、コーチとして難しさを感じている部分はありますか?
ある程度割り切っているので、変な葛藤や難しさは感じていないかもしれませんね。
選手全員が僕と同じことができるとは思っていないですし、逆に僕も彼らのようにはできないことが多い。
自分のスタイルをある程度持っている選手がプロになれるんでね。
僕のやり方を押し付けたいと思わないですし、なるべくそれぞれのやり方は尊重したいと思っています。
――一歩引いて、選手たちに考えさせた上で、必要に応じてサポートするというスタンスでしょうか。
そうですね。 ただ、高卒の選手や育成選手については導いてあげなきゃいけないこともあるので。
僕もできる範囲で何か伝えられるところは伝えていかなきゃいけないと思っています。
◆フォークボールを直伝
――コーチになって、何を教えることが多いですか?
やっぱりフォークボールを聞いてきてくれる選手が多いですね。秋季キャンプでは、一番寺西(寺西成騎投手)が聞いてきてくれました。
横山(横山楓投手)もよく「どんな感覚で投げるんですか?」と聞いてきてくれます。
聞いてきてくれるのはやっぱり少しうれしいですね。
――今、コーチ目線で注目選手はいますか?
全員に期待しています。すぐにでも一軍に上がってプレーできるレベルの選手がたくさんいます。 皆にこのキャンプで一つでも二つでもレベルアップしてもらいたいと思っています。
――ライバルとしても実力ある選手たちが揃っているなという印象ですか?
そうですね。 ブルペンで見ていても、どの選手もすごく良いボールを投げていますし、この選手たちに負けないようにという気持ちでいます。
コーチとして見ている時はコーチとして見ますが、選手としては自分のすべきことをするだけです。割り切ります。
もう20年やらせてもらっているんで、キャンプのブルペンで競うわけじゃないということもわかっています。
試合でいかに投げられるかを意識しています。
◆ゴルフで息抜き
――1か月間過ごすキャンプ地・宮崎についてはどう感じていますか?
良いところだと思いますよ。食べ物が美味しいですし。関西よりも暖かいですし。良い環境です。
――キャンプの休日は何をして過ごすことが多いですか?
皆とゴルフに行っています。
去年までは選手と一緒に行っていたんですが、今年はコーチの方々とも行かせてもらおうかと思っています。
――ゴルフが一番のリフレッシュ方法ですか?
そうですね。何もせずにゆっくりする休日よりも、ちょっと身体を動かして皆と楽しく過ごす方が僕は好きなんですよ。
こういう息抜きもあるからこそ、キャンプもしんどいけど頑張ろうと思えているかもしれないですね。
ゴルフは楽しいですし、本当にリフレッシュできるんで。そういうのが好きな選手たちで集まっている感じですかね。
――最後に今シーズンへの意気込みとファンへのメッセージをお願いします。
チームは二年連続で優勝できず、僕も二年連続で一軍で活躍することができませんでした。
今年こそ、しっかり投げて優勝できるように頑張りたいと思っています。
応援よろしくお願いいたします。
***
選手とコーチ、二つの役割と向き合う21年目の春。覚悟を胸にマウンドへと向かう平野投手兼任コーチに熱い声援を送ってください。