「え!髪型変わってる」「うそ!グラブの仕様ちょっと変わった!」。球団チケットグループの前澤弘奈は、試合中継を観ながら選手の小さな変化に目を光らせる。彼女はボブルヘッド付きチケットの企画担当者。ボブルヘッドのお渡し日には、可能な限りその時の選手に近い姿のものを届けたい思いがある。山岡泰輔投手を筆頭に、おしゃれな選手が多いバファローズ。ちょっとした“イメチェン”はよくあることだが、前澤は違う意味でドキドキしてしまう。「休みの日でも中継を観ていて変わってるのに気づくと、肝を冷やします…」。そう語る様子からは、ボブルヘッド作りへの並々ならぬ情熱とこだわりが垣間見える。今回はそんな前澤にボブルヘッドの製作について尋ねた。
◆人気コレクションアイテム
ボブルヘッドは、コレクションアイテムとして人気が高い首振り人形。今シーズンは、宮城大弥投手、平野佳寿投手、T-岡田選手、杉本裕太郎選手のボブルヘッド付きチケットを販売。どれも予定枚数を終了し、好評を博している。
前年11月ごろから準備を始める長期戦。前澤は「顔やフォームを実物により似せるためにも、メーカーと多くのやり取りや調整が必要です。数ある企画チケットの中でも一番最初にとりかかります」と説明する。
◆マイナーチェンジ
そんな前澤が頼りにしているのは、球団グッズの企画・開発を担当するMD企画グループの中島英太郎グループ長。今シーズンは、中島のアイデアで素材やデザインを一新。樹脂に石を混ぜたポリストーンという素材を使うことで、より重量感が増した。加えて、背番号、背ネームは単に色を付けるだけでなく、立体的に浮き出させて細部まで再現。“本場”MLB仕様のボブルヘッドに近づかせた。中島は「昔は直立のボブルヘッドが主流でしたが、今では色んなポーズで製作が可能です。自立できる、ぎりぎりのポーズで調整していくところもボブルヘッド作りの醍醐味の一つ」と語る。
◆平野佳投手の躍動感
そのポーズにこだわるために欠かせない作業が、写真の選定だ。あらゆる角度からの多くの写真を参考に、選手の実物に近づかせる。躍動感あふれるフォームを再現するため、プレー写真がベースになる。なかなか骨が折れる作業だそうで、前澤は「球団で撮影した大量の写真をチェックし、それでもこれという写真がない場合は、インターネットの海をさまようこともあります」と話す。
平野佳投手のボブルヘッドのモデルは、昨年の日本シリーズでのこの一枚。ボールの握り方は前澤のこだわりで、必殺フォークボールにした。「切り取ったその一瞬の記憶が、ボブルヘッドと一緒に蘇えるといいなと思っています」。平野佳投手のボブルヘッドを手に入れた方には、ぜひ日本シリーズでの激闘を思い出していただきたい。
◆昇天ポーズ
今シーズン、特に思い入れが強いのは杉本選手のボブルヘッドだという。バッティングシーンや投球シーンのものが一般的な中、昇天ポーズの採用は前澤にとって挑戦だった。キャンプ時に「今シーズンも昇天ポーズしますよね?」と球団宣伝グループの仁藤拓馬を通して確認し、このポーズでの製作に踏み切った。「他の選手のプレー中の真剣な表情とは違い、ホームランを放った後に出る笑顔が印象的。本人らしく仕上がりました」と前澤は胸を張る。
苦労を重ねて完成したボブルヘッドは選手たちからも大好評。杉本選手は、8月5日試合後のヒーローインタビューで自身のボブルヘッドを取り出し「ゲットできた方は、僕のボブルヘッドと一緒に寝てください!」と満面の笑みを浮かべた。
◆「ボブル顔」
前澤と中島は今シーズンの製作を振り返り「4人とも特徴ある顔立ちだったから、完成度が高まったよね」と口をそろえる。顔を似せるためには目、鼻、口、輪郭などのパーツの特徴が重要で、特にひげを伸ばしている平野佳投手とT-岡田選手はもってこいだったという。前澤と中島は、そういった選手の顔立ちを「ボブル顔」と親しみを込めて呼んでいる。
最後に、前澤は「今後も選手の個性を引き出し、集めたくなるボブルヘッドを作りたい。試合にお越しいただく大きなきっかけになれば」と楽しげに語った。選手の変化にドキドキさせられる毎日はしばらく続きそうだ。来シーズンのボブルヘッドにもご期待ください。(西田光)
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