バファローズジュニア出身、昨年のドラフトで指名された唯一の高卒ルーキー池田陵真選手。大阪桐蔭高校で主将を務めた期待の新人は、憧れ続けたプロの世界で「楽しみながらやれています」と充実感をにじませる。ジュニア時代から変わらぬ鋭いフルスイングを武器に、ルーキーイヤーをひたむきに駆け抜けている。
◆やんちゃ坊主
少年時代はやんちゃ坊主だったという池田選手。「『ちゃんとカバンのチャック閉めて』といつも注意されていました」と、当時ジュニアチームのコーチを務めていた乾絵美スカウトとの思い出を無邪気に話す。ただ、この頃からすでに野球に取り組む姿勢は光っていた。乾スカウトは「切り替えのできる子。いつもニコニコしているのに、試合になると目がグッと真剣になった」と当時を振り返り「教えたことを一生懸命取り組んでくれる姿が印象的でした」と評価する。本人が「小学6年生ぐらいからずっと自主練習を大事にしてきました」と話す通り、大阪桐蔭高時代は練習の虫として周囲から一目置かれていた。プロ入り後は疲れをためないように練習量を調整しているが、上達のために自分と向き合う努力を惜しまない姿勢は、ジュニア時代から一貫している。
◆一軍での活躍
初の一軍昇格は5月1日。その日に9番・右翼手でプロ初出場初スタメンを飾った。第3打席でライト前に初安打を放ち、中嶋監督も「大したもん」と称賛。次戦、5月3日にはプロ初打点をマークし、早くも大器の片鱗を見せつけた。「どんな球も打ちにいくつもりで、しっかりバットを振れました」と活躍を振り返る。
最も自信につながったのは、5月13日の千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手との対戦。「見たことがない速い球」という剛球右腕との対決は、ライバル心を燃やす同級生の松川虎生捕手との一戦でもあった。「第一打席の初球は、一番いい真っすぐの勝負か」との読みが当たり、迷いなく振り切ったバットで161キロの剛速球をセンター前に弾き返した。「素晴らしいピッチャーから打てて、最高に嬉しかったです」と興奮気味に当時の記憶を蘇らせる。
一軍にいる機会を最大限生かそうと、リスペクトする吉田正尚選手からは打席での間合いの取り方や考え方を教わった。数々の卓越したプレーを目に焼き付け「吸収するところしかなかった」という貴重な半月を過ごした。
◆ファームで着実に
一方、反省点も多くあった。「エース級ピッチャーを相手にどんどん振っていけたのは良かったですが、ファールが多くなってカウントを追い込まれて凡打…というパターンが多かったです」と分析する。失投の少なさをはじめ、球速、キレなど全てで一軍投手のレベルの高さを痛感した。現在は「苦手なコースをなくしたい」と、どのコースでも力負けしないスイングを目指している。
同じ大阪桐蔭高の先輩、山足達也選手からのアドバイスで、対戦した投手について1打席ごとに丁寧にメモを残し、改善点を探るのが日課。「打席に立った自分しか感じなかったことを書き残して、何度も見直して考えています」と野球脳も鍛えている。
ウエスタン・リーグ公式戦では、7月29日から8月24日まで、出場した11試合全てで安打を放った。19歳の誕生日だった8月24日はマルチ安打。直近10試合のファーム公式戦打率は3割を超え、調子は上向きだ。それでも「バットを振り切れていなかったり、まだまだです。もっと練習しないと」と常に成長意欲を覗かせている。
◆夢は首位打者
母校、大阪桐蔭高の夏の甲子園ベスト8の活躍に「秋も春も含めて、あれだけ勝ち続けたのはすごいの一言。みんな本当に頑張っていたし、自分も負けていられないです」と大きな刺激を受けたという。シーズン終盤に向けて「結果がついてきてもこなくても、自分らしくやり切ったと胸をはって言えるシーズンにしたい」と力強い。
負けず嫌いで妥協したくない性格はジュニア時代から。「やるからには、一番になりたいんで」。変わらない純粋な向上心で、夢のタイトル「首位打者」獲得へ、努力を積み重ねている。(西田光)