プロ入り2年目、2020年ドラフト1位の大型右腕、山下舜平大投手。今シーズンは実戦から離れていた時期もあったが、着実にプロの階段を上り、技術面も精神面も鍛え上げてきた。「人と比べちゃう時もあるけど、結局自分は自分。焦りは無いです。全て良い刺激として前向きに捉えています」と冷静に力強く話す。これまでの収穫や、今後の目標について話を聞いた。
◆伸びた身長
5月4日のファーム交流戦での登板を最後に、しばらくマウンドでの姿を見せなかった山下投手。入団当初189センチだった身長がさらに伸びていたからだった。「1、2センチ伸びて、今はもう190センチ超えていると思います」。トレーナーと相談の上、身体の成長を考慮し、他の選手たちとは別メニューでの調整を行っていた。8月ごろからブルペンに入って少しずつ投げる球数を増やし、実戦復帰へと歩みを進めた。
◆自己最速
復帰戦は9月22日のウエスタン・リーグ公式戦対阪神タイガース戦。5回からリリーフとして登板した。「むちゃくちゃ楽しみにしていた久々のマウンド。最高の感触でした」。4ヶ月半くすぶらせていた闘志を解き放つように渾身のストレートを走らせ、打者3人とも最後は決め球のカーブで仕留めた。
「完全に疲れが取れたフレッシュな状態だったんで」と、この日のマックスは自己最速の155キロ。戦線離脱前から2キロアップしたストレートをいきなり披露してみせた。それでも「狙って出したわけではなかったので、まだまだいけるんじゃないかと思います」とさらなる伸びしろを覗かせる。
続く28日のウエスタン・リーグ公式戦対広島東洋カープ戦での登板でも、ストレート、カーブを武器に2回を無失点。この日も球速155キロを叩き出す好投を見せ、勝ち投手となって試合を締めた。
今シーズンの二軍成績は、8試合35回1/3を投げて防御率3.31。奪三振率は昨年を大きく上回る10.70を記録。今後も無理はせずに少しずつ球数を増やし、実戦感覚を掴み直す。
◆絶対に165キロ
「未完の大器」「将来性抜群」と評される若き右腕は、周囲からの期待も自覚している。「一軍で投げてないんで、まだちゃんとプロ野球選手をやってるとは思っていないです。先輩方の高いレベルの先発ローテに割って入っていかないといけない」。きっぱりと話す目には、飛躍への大きな覚悟が宿る。
ハングリー精神は人一倍大きい。入団当初から球速165キロを目標に掲げてきた。「周囲からは球速ばかりを気にするなと言われることもありますが、この目標だけは絶対に曲げません。自分の伸ばすべき武器なので」。力強い口調からは、それが決して大それた目標でないことをうかがわせる。
◆インドア派
山本由伸投手をはじめとする一軍選手を見て学んだ、オンとオフの切り替えも大切にしている。オフの楽しみについて「寝るのとゲームするのが好きです。インドア派なので、コロナで外出できなくても痛くもかゆくもないんですよ」と表情を崩して話す。東晃平投手らとオンラインゲームを楽しんでリフレッシュするという。
逆境とも思える自身の調整期間やコロナ禍にも動じず、むしろ収穫として推進力にする前向きな精神力の持ち主。日々、周囲から刺激や学びを受け取りながら、焦らずじっくりと自身を仕上げていく。無限大の可能性を秘めた大器に、今後も目が離せない。(西田光)