選手がこぼした笑顔に、すかさずズームイン。鮮やかな特別ユニフォームに、上下左右あらゆる角度からレンズを向ける。「Bs夏の陣2023 supported by SAMTY」のポスター用写真撮影が行われた一室で、屈託のない笑みを浮かべてビデオカメラ越しに選手を追う女性がいた。昨シーズンまで球団公式ダンス&ヴォーカルユニット「BsGirls」のメンバーとして活躍したMIYU。グラウンドでしなやかなダンスパフォーマンスを披露していた彼女が、現在は球団公式YouTubeチャンネル「BsTV」、球団公式エンタメ有料サイト「BPB DX」の動画制作に携わり、バファローズの魅力をファンに届けている。「勉強の毎日です。大変だけど、BsGirls卒業後も大好きなバファローズに関われていることに感謝して頑張っています」と話すMIYUに、これまでの歩みとネクストステージにかける思いを聞いた。
◆BsGirls時代から動画制作に奔走
彼女が所属するのは、球団の動画コンテンツ制作や球団公式ホームページの運営を行う株式会社ホットファクトリー。MIYUは、同社の動画班スタッフとして、BsTV、BPB DXの撮影と編集を行っている。
2016年から22年まで7年間、BsGirlsのパフォーマーを務めたMIYU。本格的な動画制作に出会ったのは、21年3月、BsGirls公式YouTubeチャンネル「BsGirls Channel」立ち上げの時だった。「BsGirlsをもっと支えられる存在になりたい」と、自ら編集担当を買って出た。
スマートフォンアプリを使った動画編集は得意だったものの、ほぼ未経験。「何から始めていいのかもわからない。時間もない。どうしよう」。最初は戸惑いながら手探りで仕上げ、周囲のメンバーを巻き込んで編集の確認作業をしてもらったという。反省点を見つけては改善の繰り返し。勉強は欠かさず、編集が上手いと感じたユーチューバーの動画を月に200本近く視聴して技術を磨いた。いつしか自費で高性能のカメラや機材を購入するほど、動画制作にのめりこんでいった。
「卒業後も、大好きなバファローズを支える仕事がしたい」。そんなMIYUの真っすぐな思いと、動画制作のスキルが、ホットファクトリーの目に留まった。今年のキャンプインと同時に入社し、これまでとは異なる新しいシーズンを過ごしている。
◆元BsGirlsだからこそできること
「テンポ感とわかりやすさ」を重視したMIYUの編集スキルは、新たな職場で早速生かされている。好評を博した「BsTVスタッフの勝手にカメラ!~頓宮に遭遇~」やBPB DX「【ホワイトデー企画】選手からバレンタインのお返し!」はMIYUが担当。抜群のタイミングでの効果音、的確なツッコミのテロップで、選手の面白さを際立たせる。その技術とセンスは、同じホットファクトリーのスタッフ間でも高い評価を得ている。
彼女が特に生き生きとした表情で撮影するのは、やはりBsGirls。この日は「夏のデートに恋人に着てほしい服装」をテーマに、4つのデザインイラストからメンバー一人ひとりがチョイスした。「どうしてそれを選びましたか?」「じゃあ、その服を着た恋人と、どこでデートしたい?」。楽しげに深堀りするMIYUに、メンバーは気負わずありのままの言葉を返す。「メンバーと一緒になって撮影している気持ちです」とMIYU。それぞれの個性を引き出すことに意識を向けながら、一体となって撮影を行えるのは、彼女の大きな強みとなっている。
◆元BsGirlsリーダー、CHALからの言葉
そんなMIYUが「人生を変えてくれた、家族のような大切な人」と口にするのは、元BsGirlsのリーダーで現在は球団イベント・運営グループで働くCHALこと松元唯香。現役時代は、BsGirlsの未来や、メンバーとしての個性の伸ばし方について、夜通し語り合った仲という。「CHALさんの熱い思いや考え方に触れて、BsGirlsとバファローズがより大好きになったんです」とMIYU。昨シーズンまでBsGirlsを続けた理由を「CHALさんを見送ってから卒業するためだった」と話すほど、その存在は大きい。
BsGirlsに入って間もない頃、MIYUはパフォーマーだけでなくヴォーカルにも挑戦したい思いで揺れていた。その時に松元から受けたアドバイスは「まずは、目の前にある自分のできることに100パーセントの力を出し切った方がいい」。その言葉で、パフォーマーとしてダンスを極める覚悟ができた。それが、自身のBsGirls内でのポジションを確立していくことにも繋がったという。
今の仕事にも通じる部分がある。周囲の先輩のスキルの高さに圧倒され、悩むこともあるが「自分ができることをしっかりと追求していきたい」。ブレずに、今すべき仕事に真っ向から向き合うことで、長所を伸ばしていこうとしている。
◆「素顔や意外性をどんどん引き出したい」
BsGirlsの頃からMIYUが信条にしているのは「初心を忘れるべからず」。初めてステージに立った時の感動や熱量。それらを保ちながら活動するように心がけてきた。動画制作における初心は「ファン目線を大切にする思い」。独りよがりにならず、ファンが喜び、求めるものを丁寧に作ることを誓う。
バファローズの魅力について語り出すと止まらない。「BsGirlsって、むっちゃ可愛いんです。選手の皆さんって、すっごく面白いし格好いいんです。それをファンの皆さんにもっと知ってほしい」と熱い思いを持つMIYU。BPB DXの制作には、特に力を込めて「『この選手、こういう一面があるんだ!』と、気付いてもらえるコンテンツにしていきたい。選手の素顔や意外性をどんどん引き出していけるように頑張ります」と意気込んでいる。
転身しても思いは同じ。バファローズを愛し、ファンに楽しんでもらうために、できることに精一杯取り組む。新たなステージで再スタートを切ったMIYUは、忘れられない初めての夏に100パーセントの力を注ぐ。(西田光)