夏のポスター「キングオブコンビ」の異次元クオリティ ポスター制作の裏側に迫る

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「仕上がりが異次元」「ほんまにこういう芸人おりそう」「オリ姫デーからの振り幅がえげつない」。ファンの間で話題沸騰中のオリックス・バファローズの夏のポスター「キングオブコンビ」。実力派漫才師からキワモノ芸人まで、あらゆるコンビが秀逸なキャッチフレーズと共に登場し、ファンの心を鷲掴みにしている。企画担当者はポスター制作20年、事業企画部の後藤俊一部長。「これまでのポスターとは一線を画します」と確かな手応えを語る。ポスター制作の裏側に迫った。

写真:2022年と2021年の夏のポスター

◆面白さに極振り

毎年恒例となっている夏のバファローズのポスターは、これまで、ココナツやドーナツ、アイスをテーマに、夏らしいビビッドなデザインに仕上げてきた。ただ、今回のポスターについて後藤は「夏感はゼロですね。面白さに振り切りました」ときっぱりと話す。

「球団には『ラオ福』『みやくれ』と、おなじみのコンビがいてコンビ推しのファンも多い」とお笑い賞レース風のビジュアルに仕上げることを決めた。バファローズ大好き芸人がネタバトルを繰り広げる「Bs-1グランプリ」の人気ぶりも踏まえながら「大阪の球団ですし、お笑いはやっぱりファンに刺さりますね」と考えを語る。

◆ほんまにおりそう感

誰と誰をコンビにするか、さらに、そのコンビ名とキャッチフレーズのアイデア出しは、後藤とグラフィックデザイナーたちを中心に行った。

重視したのは「ほんまにおりそう感」。選手同士の仲の良さも踏まえながら、共通点を見つけてコンビを作る。コンビ名は、名前や個性、プレースタイルを生かし、時にはパロディも取り入れた。

岡山県備前市出身の山本由伸投手と頓宮裕真選手は実家が隣同士であることから「奇跡の幼馴染」をキャッチフレーズにコンビ名は「おとなりさん」。色違いのネクタイを締めたスーツ姿で、二人でお家のポーズを作って仲良しをアピールする。2年連続沢村賞のエースと、打率リーグトップをひた走る長距離砲のコンビに、ファンからは「めっちゃ正統派漫才しそう」「大爆勝の大本命」と絶賛する声が上がっている。

◆なりきった選手の表情に注目を

さらに注目すべきは選手の表情づくり。「ザ・きゃっち」として登場した森友哉選手と石川亮選手は、両選手とも移籍1年目のシーズンにも関わらず「ちょっと、ちょっと」と聞こえてきそうな会心の演技を披露している。
どの選手も完璧ななりきりを見せているが、中でも後藤が「化学反応を起こしてくれました」と話すのが「ジョニスパック」のコンビ。

写真:ハリセンを片手にポーズをとるワゲスパック投手

初のポスター撮影だったジェイコブ・ワゲスパック投手。キンキラのドでかい蝶ネクタイとハリセンの装備について、後藤は「これがジャパニーズコメディアンスタイルです!」と少々強引に納得してもらった。ピンでの撮影ということもあり最初は動揺しきりのワゲスパック投手だったが、楽しい撮影現場の雰囲気に次第に緊張は和らいだ。「シリアス!プリーズ!」のオーダーに、この表情。終了するとやり切った様子で「面白い撮影だったね」と部屋を後にした。

写真:照れ笑いを浮かべる黒木投手

一方、黒木優太投手は「想像以上のハマり具合。ダークホース的存在でした」と撮影現場のスタッフたちに言わしめた。「ワゲスパック投手がツッコミなので、黒木投手はボケでお願いします」というオーダーに「え!逆でしょう!?」と、ツッコミの適性をアピールしたが、思いは届かず。それでもレンズを向けられると、たちまちボケらしい絶妙な照れ笑いを披露。「最高!」「むっちゃいい!」と興奮する撮影陣にたじたじの様子だった。

「継投は国境を越える」。ポスター撮影においてもピタリとはまった継投策。想像を超える相性の良さを発揮したコンビは、ポスター右上の目立つ“特等席”に配置されることとなった。
全力投球で撮影に臨んでくれた選手たちに後藤は「野球だけでなく撮影もプロフェッショナル。こちらからのオーダーにしっかりと応えてくれました」と感謝しきりだった。

◆スコアラーも登場

協力してくれたのは選手だけではない。「俺がお前でお前が俺で」がキャッチフレーズのコンビ「影武者」には、松井雅人スコアラーが登場。廣岡大志選手に顔がそっくりとファンの間で話題になったことから、相方として急遽打診した。「『俺、選手ちゃうのに』と苦笑いしながらも、快く協力してくれました。選手の頃からオリ姫デー関連で色々と撮影させてもらっていたので、すんなり理解してもらえました」と後藤。これまでの軌跡があったからこそ実現した奇跡のキャスティングだった。

◆妄想がとまらない

SNSは連日大盛り上がり。ファンの中には、コンビ結成のいきさつから、所属するお笑い事務所にまで想像を膨らませて発信する人も。後藤は「去年のオリ姫デーでは『妄想がとまらない』というキャッチフレーズでムービーを作ったのですが…。ファンの皆さん、今回のポスターの方が妄想をとめられないようですね」と満足げな表情を浮かべる。反響を受け、グッズ開発を担当するMD部では急遽グッズ展開の検討を進めている。

オリ姫デーのアイドル路線から一転。選手たちのお笑いのポテンシャルを存分に見せつけた夏のポスター。「大爆笑」からの「大爆勝」の夏に期待したい。(西田光)

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