育成ドラフト3巡目指名で東北福祉大学から入団したルーキー、入山海斗投手。これまでウエスタン・リーグ公式戦26試合に登板し、防御率2.16、リーグトップタイの11セーブと、目覚ましい活躍を見せている。クローザーとして経験を重ねる右腕は「毎日あっという間に時間が過ぎていきます。試合で投げることができて幸せ」と充実感をにじませる。7月18日のフレッシュオールスターに向け、さらなる躍進を誓うルーキーのこれまでの歩みに迫った。
◆バファローズファン
大阪府守口市出身の入山投手は、幼少期からのバファローズファン。野球を始めた小学3年生ごろから、父親に連れられて度々京セラドーム大阪に足を運んだ。試合後のグラウンドを駆け回る「ベースランニング」に参加し「楽しかった思い出があります」と当時を振り返る。
T-岡田選手をはじめ、バファローズの選手たちが躍動する姿を目に映し「投げる球も、打球も本当にすごい。格好いい」と憧れを募らせた。小学4年生時の行事「二分の一成人式」では、岸田護コーチや金子千尋氏の名前を挙げ「いつかこんなすごい選手になりたい」と夢を語ったという。応援している球団からのドラフト指名の喜びは大きかった。
◆可能性あふれるストレート
大学時代のリーグ戦登板は、1年生秋の1試合のみ。それでもスカウト陣の目に留まったのは、可能性あふれるストレート。牧田勝吾編成部副部長は「キャッチャーミットに突き刺さる強さがあります。有望な選手が集まる東北福祉大学で下級生からメンバー入りしたポテンシャルの高さも評価していました」と指名に至った理由を語る。
直球の精度は宮崎春季キャンプでさらに磨かれた。少年時代に憧れた投手であり、大学の先輩でもある岸田コーチの助言で、投球フォームの意識を変えた。「投球時に右足でプレートを強く蹴る意識をすることで、身体の動きに勢いが出て球速が伸びました」と入山投手。大学時代の球速は平均145キロ程だったというが、コンスタントに150キロ超の球速を叩き出せるようになった。
◆フォークの習得
アピールが実を結び、3月15日、東北楽天ゴールデンイーグルスとの試合でオープン戦初登板を果たしたが、ここでプロのレベルの高さを目の当たりにする。ストレートを中心に組み立てるも「どこに投げても打たれる気がして…。無理だと思いました」。2/3回2失点でマウンドを降り、悔しいオープン戦デビューとなった。
だが、一軍バッターとの対戦は大きな刺激となった。「ストレートだけじゃ通用しない。高低を使って三振を取れる球がほしい」と、フォークの習得を決意した。
コーチや投手陣、多くの人のアドバイスに耳を傾けたが、中でも特に参考にしたのが大学の先輩である椋木蓮投手。「球の落ち方は蓮さん(椋木投手)と全然違いますが、握り方は同じ。ボールを指3本でなく4本で持つ、ちょっと特殊な握り方です」。実戦で使っていく中で改善を繰り返し、投球の引き出しを増やした。
◆マウンドに立てる幸せ
メンタル面でも成長を覗かせる。シーズンが始まって間もない頃は、登板時に極度に緊張し、吐き気や震えもあったというが、現在は「投げていて楽しめるようになってきました」。岸田コーチも「徐々に自信がついてきたようです。打者と思い切って勝負できるようになってきました。打たれても怖気づいたりせず、開き直れる精神力もあります」と期待を口にする。
緊張や不安を乗り越えられるのは、マウンドに立てる幸せを人一倍わかっているから。「大学時代にリーグ戦でほぼ投げられなった分、戦える楽しさや嬉しさが強いです」。思いを解き放つように、ボールに力を込める。
◆守護神への思い
フレッシュオールスター選出について「大学の頃の自分だったら考えられないこと」と素直に喜ぶ。「強い選手と対戦できると思うと楽しみ。いいピッチングができるように頑張りたい」と張り切っている。
クローザーとしての思いは強く「僅差で任された最終回は、バッターも集中力を上げて勝負してくる。そんな緊張感のある場面でリードを守り切れたら、やっぱり楽しいです」と頼もしい。
目標は「見ている人をワクワクさせられる選手になること」。幼い頃に目に焼き付けた京セラドーム大阪のマウンド。そこに立ちスタンドを沸かせられる日を夢見て、一歩ずつ着実に進化を続けている。(西田光)