バファローズおなじみの楽曲に合わせ、ネイビー、ゴールド、レッドと色鮮やかな大輪が次々とほっともっとフィールド神戸の夜空に咲き誇る。スタンド、グラウンドにいる誰もが見とれ、大きな歓声が何度も沸き起こった「Bs大花火大会」。2000発の花火を手掛けたのは、山梨県に本社を構える株式会社マルゴーだ。30年以上にわたり神戸の夜空を鮮やかに彩ってきたマルゴーの花火師たちに、花火にかける思いを尋ねた。
◆内閣総理大臣賞受賞
マルゴーは創業1954年の老舗花火メーカー。花火界で最も名誉な賞とされる「内閣総理大臣賞」を獲得するなど全国屈指の技術を持ち、数々の大規模花火大会で打ち上げを行っている。
ほっともっとフィールド神戸での花火ナイトと大花火大会は、マルゴーにとっても特別な思いがある。齊木智社長は「歴史も長く、とても大切にしている花火の一つ。ただ、すごく緊張感のある独特の現場でもあります」と話す。海や川ではなく山頂という特殊な打ち上げ場所であることに加え、イニング間に打ち上げる花火ナイトでは「絶対に試合を滞らせてはいけない」という思いから神経をとがらせて取り組む。打ち上げ前後には木々に向かって放水が行われ、撤収時にも木々に火の粉がかかっていないか入念に確認する。
◆ベテラン花火師のこだわり
そんな難しい現場を任されているのが、花火師の宮本博さん。ほっともっとフィールド神戸での花火を20年以上担当している。
花火ナイト、大花火大会当日は山梨県からトラックで駆けつけ、球場東側にある山の頂上でセッティングから打ち上げまでを担う。
大花火大会では、選手の登場曲をはじめとする全7曲に合わせて花火を打ち上げる。全曲、宮本さんのこだわりがたっぷり詰まっている。「どの曲も数えきれないほど聴きました。登場曲だと、その選手の座右の銘やプレースタイルも調べて構成を練りました」。単純に音楽に合わせるだけでなく、バファローズファン目線で趣向が凝らされている。
◆グラデーション花火
花火が打ち上がるタイミングは1/100秒単位でプログラミングされている。「3、2、1、点火!」。無線機で送られた宮本さんの合図で、音響担当者、打ち上げ担当者それぞれがスイッチを押し、大花火大会がスタート。
トップバッターを飾ったのは、山下舜平大投手の登場曲。「すごく可愛らしい曲調なので、バーンと大きな音で開く花火ではなく、優しく開く花火をメインで選びました」と宮本さんは語る。
3曲目に場内に流れた勝利時の楽曲「Toca Toca」(Project X)では、手の込んだ花火を仕掛けた。マルゴー自慢の「グラデーション花火」。通常の花火玉の倍以上の時間をかけて作られるこの花火は、光の粒がブルーからレッドに鮮やかに変化していく。宮本さんは「独特のリズムを持ったユニークな楽曲に合うように、一風変わった花火を打ち上げました」と仕上がりに笑みを浮かべた。
続く中川圭太選手の登場曲では、歌詞を踏まえた「無敵の中川」と「白星」のイメージを投影。「あえてこの曲では、白や銀を基調にしました」。他の楽曲でカラフルな花火を多く使っている分、シンプルな色が一層際立った。
◆にこちゃんマークの花火
選手の〝リクエスト〟も生かされていた。7月8日、ヒーローインタビューでの山本由伸投手。「どんな花火が好きでしょうか?」の問いかけに「うーん、むずいっすね。にこちゃんマークのやつとか」。その言葉を聞いた宮本さんは、早速反映。山本投手の登場曲に合わせ、スマイルマークの花火を9発打ち上げた。「ご覧になっているお客様はもちろん、やっぱり選手にも喜んでいただきたいんです。バファローズのエースですし、チームカラーのネイビーやゴールドの花火もたくさん入れました」と思いを語る。
◆「チームを活気づけたい」
ラストの球団応援歌「SKY」では、黄金の「しだれ柳」の大連発で大花火大会を華やかに締めくくった。歓声を背に、宮本さんは「この瞬間に一番やりがいを感じます。これからも進化した最先端の花火を取り入れ、お客様に楽しんでもらえる大花火大会をお届けしたい」と来年の大花火大会に向けて早くも意欲を語った。
齊木社長も並々ならぬバファローズ愛を語る。「我々が元気よく花火を打ち上げることで、とにかくチームを活気づけたい。いつもバファローズと一緒に優勝に向かって走っています」。球団と並走する熱い思いが込められた花火は、これからもチームの背中を押してくれる。
8月5日(土)、6日(日)に行われるファームの真夏のナイターでも、花火を打ち上げ予定。ぜひバファローズの試合観戦を通して夏の風物詩をお楽しみいただきたい。(西田光)