下山真二のスカウト道 社会人選手獲得への情熱と思い

Share

近鉄バファローズ、オリックス・バファローズで外野手として活躍した下山真二は、現在スカウトとして球団を支えている。現役時代はチームを明るく鼓舞するムードメーカーとしても知られ「シモヤマン」の愛称で親しまれた下山スカウト。今も、担当チームの監督やコーチと難なく打ち解け、人脈を広げながら注目選手たちの情報をキャッチしている。「色んな人と出会える、他にはない面白い仕事ですよ」。日焼けした顔でいたずらっぽく笑うその瞳の奥には、熱い情熱が宿る。担当地区の選手たちに熱視線を注ぐ下山に、5年目のシーズンへの思いとスカウトとしての真髄について聞いた。

写真:堀選手㊧の指名挨拶で笑顔を見せる下山㊨

◆4人の新人選手を担当

下山は、2003年近鉄バファローズに入団。積極的な打撃が持ち味の外野手として9年間にわたって活躍し、引退後は外野守備・走塁コーチ、打撃コーチを歴任した。2020年からスカウトを務めている。
昨シーズン、東海地区をメインに担当していた下山。新人12選手のうち4人が下山の担当選手だった。ドラフト3巡目の東松快征投手、4巡目の堀柊那選手、5巡目の高島泰都投手、育成3巡目の宮國凌空投手。「僕が担当する地区に嬉しいことに有望な選手が多かった。ドラフトの後は指名挨拶や仮契約でむちゃくちゃ忙しかったです。過去イチ大変でしたね」と充実の1年を過ごしたそうだ。

写真:ドラフト5巡目で王子から入団したルーキー、高島投手

◆即戦力の獲得

担当した4選手の中で特に魅力を熱弁したのが、王子から入団した高島投手だった。高校生は素材や将来性を含めて評価する一方、社会人選手は試合中の駆け引きや修正力も含めた総合力を見定めることになる。

そこには現役引退後8年間コーチとしてチームを支えた経験も生きる。「ドラフト候補の投手を見る時には、コーチ時代に立ち返って自分ならうちの選手たちにどう指示するかを考えます。どう狙い球を絞らせてどう対策すべきかを頭の中でシミュレーションします。その中で高島投手は『このカウントでこのコースと球種で勝負してくるのか!』と驚かせてくれました」と話す。即戦力選手の調査は下山にとって大きな醍醐味の一つになっている。

写真:オープン戦で力投する阿部投手

◆社会人選手の「光」

大学卒業後、日本生命で5年間プレーして実績を積みプロ入りした下山は、社会人選手獲得に特別な感情を持つ。下山が担当した中で最も思い入れのある選手は、2020年ドラフト6巡目指名の阿部翔太投手。日本生命の後輩にもあたる。

28歳の年で指名された阿部投手には、入団当初からエールを送り続けていた。「社会人野球の『光』になれ」と。
「社会人選手たちは20代後半になるにつれてプロへの夢や挑戦心がどうしても小さくなってしまう気がするんです。28歳でプロ入りした阿部投手が活躍すれば『俺もまだまだいけるんちゃうか?』と上を目指す選手が出てくるはず。そうなれば社会人野球全体ももっと活気づいて盛り上がると思ったんです」と下山は語る。

写真:現役時代の下山

◆ピークは人それぞれ

プロ野球選手のピークについて下山は「人それぞれ。絶対に一概には言えない」とはっきりと口にする。「まさに僕の場合、頭で考えていることと身体の動きがガチっとはまったと感じたのは30歳を過ぎてからでした」。27歳でプロ入り後、32歳でキャリアハイの123試合に出場した自身の経験が根拠となっている。

年齢は足かせではない。経験を重ねることで円熟したプレーができる選手もいる。素材、身体能力、センス、負けん気。あらゆる要素を総合して、魅力を感じればマークする。阿部投手を推した時も迷いはなかった。
「平野佳寿投手や比嘉幹貴投手など40歳前後まで長く活躍している選手を見れば、20代後半のプロスタートはちっとも遅くありません」と強く主張する。

◆解禁年を過ぎた社会人選手もマーク

下山の期待通り、阿部投手の実力は2年目以降存分に発揮された。リリーフの柱として2年連続で40試合に登板。リーグ優勝に大いに貢献した。

下山は、阿部投手の活躍はスカウト界にも影響を及ぼしたと感じている。他球団のスカウトも、ドラフト解禁年を過ぎた大卒3年目以上の社会人選手をしっかりマークするようになったという。メディアのオールドルーキーへの注目度も高まっている。「阿部投手のおかげで追うべき選手が増えたんで大変ですよ」。眉を下げて笑う様子からは、特別な喜びと手応えを感じさせる。

写真:スカウト業務について笑顔で語る下山

◆新たな出会い

数多の選手からバファローズにとっての逸材を探す仕事には果てがない。「どのご縁も大切」と担当地区の注目選手を丁寧に分析し、情熱を持って追い続ける。

下山は今年から東海地区に加え、北陸と長野も担当する。「少しずつ雪も溶けてきました。また試合も練習もたくさん見に行って面白い選手を見つけてきます!」。待ちわびた球春到来。新たな選手たちとの出会いに早くも胸を高鳴らせていた。(西田光) 

Share

前の記事を見る

次の記事を見る