廣岡選手が好きな柚子こしょうをアクセントにした「廣岡選手の豚ポン弁当」、黄金のラッピングがまぶしい「頓宮選手の牛ハラミ弁当」、梅干しキムチが食欲をそそる「宗選手のチーズチャンジャキンパ」に、鶏肉を香ばしく焼き上げた「宇田川投手の鶏重」。今シーズン、京セラドーム大阪で販売されている4種類の「選手プロデュース弁当」が、人気を集めている。2013年からこれまでで約500種類の人気グルメを展開してきた選手プロデュースメニューで、初めての弁当メニュー。スタジアムグルメを担当する大阪シティドーム商業課の松本幹康さんは「お客様からたくさんのうれしいお声をいただいています。思い切って始めてよかったです」と早くも手応えを感じている。選手プロデュース弁当の魅力と戦略に迫った。
◆「並ばない」に特化
「並ばないで買えるのが本当にうれしい! 試合前の時間ってあっという間なんです。グッズを買ったりユニフォームに着替えたりトイレに行ったりと、とにかく忙しいので」。コンコースの特設ワゴンで、オリ姫の小林かよさんは笑顔で宗選手のチーズチャンジャキンパを受け取った。
この選手プロデュース弁当、他のメニューと違って公式サイトを通して事前予約注文ができる。試合観戦日の2日前までに申し込みをして決済すれば、当日は受け取るだけ。試合前のグラウンドイベントも楽しみたい家族連れや、スタンドから常に選手のシャッターチャンスを狙っていたいオリ姫を中心に好評を得ている。
松本さんの一番の狙いもそこにあった。「選手プロデュースメニューはおいしくて人気なのですが、どの店舗も行列ができてしまいやすい。試合を楽しんでいただくためにも『並ばない』に特化させた弁当の展開を決めました」という。
◆確実に手に入れられる
事前予約注文は遠方のファンにも刺さっている。キャンプ地・宮崎から駆け付けた一木晋吾さんは、京セラドーム大阪での観戦は今シーズンこの日だけの予定という。「せっかくだしちょっと贅沢もしたいし、確実にグルメを手に入れたかったんです。予約できてありがたかったです」と頓宮選手の牛ハラミ弁当を手に、上機嫌でスタンドへと向かった。
◆ドーム自家製「心を込めて」
こんな声も聞こえてきた。「おいしかったので、また買いました!」。早くもリピーターとなった岸本由佳さんは、廣岡選手の豚ポン弁当を予約していた。おいしさの理由を松本さんは自信を持って語る。「実はどれもドーム自家製弁当なんです」
オフの間にドーム2階の観戦レストラン「パノラマビアホールGRILL FESTA」を一部改修し、弁当づくり専用の調理場をつくった。同レストランを運営する居酒屋チェーン「養老乃瀧株式会社」の料理人たちが、弁当づくりでも腕を振るっている。同社のマネージャー福山俊太さんは「この道30年のベテランシェフもいます。みんなで心を込めて一つ一つ手作りしています」と自信を持って話す。
工場で作られた弁当と比較すると運搬時間もかからないため、よりおいしい弁当を提供できている。「選手プロデュースメニューとして販売するからには、クオリティを落とさず展開したかった。他のできたてメニューと比べても全く遜色ありません」。松本さんも納得の出来となっている。
◆「より快適な試合観戦を」
好評のあまり当日販売分が毎試合すぐに売り切れてしまうのが松本さんの目下の悩み。「販売数を増やせるように検討を進めています。ファンの皆さんにとって、ドームで過ごす時間がより楽しく快適になるように、しっかり策を練りたいです」と気を引き締めていた。
熱い思いがこもった選手プロデュース弁当。ぜひお召し上がりいただき、試合もグルメも存分に味わっていただきたい。(西田光)