バファローズ主催公式戦のない6月24日(月)の京セラドーム大阪。球団直営店「Bs SHOP」前には300人もの行列ができていた。駆けつけたファンのお目当ては「Buffaloes選手ぬいぐるみキーチェーン(ホーム)」のプレ販売だ。オリ姫による投票で選ばれたオリメントップ10の選手たちが、愛くるしいぬいぐるみ姿に大変身したグッズ。発表されるや否やSNS上で「これは絶対買わないと!」「可愛すぎて選べない」などと、大反響を呼んでいる。
話題沸騰中のグッズの生みの親は、オリ姫デーグッズ開発を務める球団MD部MD企画グループの竹内久美子。「ずっと作りたかった念願のグッズでした。やり切れて本当に良かったです」と、達成感に満ちた表情で話す。選手ぬいぐるみキーチェーンにかけた思いとこだわりに迫った。
◆4年前からグッズ化の構想
近年若い女性を中心に注目を集めている「ぬい活」。アイドルやアニメキャラクターなど「推し」のぬいぐるみと一緒にお出かけや写真撮影を楽しむ活動を指す。竹内がその活動に注目したのは約4年前。自身もぬいぐるみを入手して構想を練り始め、商品化のチャンスをうかがっていた。
球団内でついにゴーサインが出たのは、昨年12月。すぐさまメーカーに依頼をかけ、昨年のオリメン上位選手のデザイン制作を先行して始めた。販売開始までに要した期間は約半年。グッズの企画開発に携わって8年目を迎える竹内が、これまでで最も長い時間を費やしたグッズとなった。
◆可愛さとそっくりさを両立
これほど長期戦となったのは、クオリティを重視したからこそ。竹内は「可愛さとそっくりさを両立させるのは、本当に難しかったです。何度も何度もデザイナーとやり取りしました」と苦労を話す。
デザイン制作にあたり各選手のベースとなる写真が必要となる。その選定にも竹内ならではのこだわりが光る。正面からの写真1枚ではすませず、口元、目元、髪型と、各選手のパーツごとにベストショットを5、6枚チョイスした。選手のビジュアルの魅力と特長を細部にわたってぬいぐるみに投影するためだ。
「球団のInstagramの写真はもちろん、選手個人のSNSの写真、メディアに掲載された写真など、この世に出ているありとあらゆる写真全てを10選手分見たつもりです」。これぞという写真に巡り合うまで、粘り強く探し続けたという。
◆山崎投手の口元にも注目
山崎颯一郎投手の場合は上記の写真をはじめとした6枚を元にデザインされた。オリ姫デーのビジュアルでは金髪だが、ここではあえて黒髪にした。「春先の金髪は一時的で、夏場は黒に戻すと聞いていました。グッズが発売される時期に合わせたかったんです」。さりげなく色付けされた頬にも意図がある。「美肌でも知られている山崎投手は色が白く、頬がピンクに染まりやすいので」。口元については「写真をよく見てもらうとわかるのですが、笑った時の口角に柔らかい丸みが出るんです。その特徴も生かしました」。こだわりを話し出すときりがない。
◆宮城投手に苦戦
最も苦戦したのは、宮城大弥投手だったという。これまで「宮城くんとろーたんグッズ」や「ボウズボウズグッズ」などで度々イラスト化しているが「今回のぬいぐるみの場合はテイストが全く違うので、一から考え直しました」と竹内。髪型と口元は当然ながら、特に目と眉が重要だった。幅や長さの数ミリの差で全く違った印象になってしまう。「ぬいぐるみになると絶対に可愛い選手なので」とデザイナーに伝え、試行錯誤を繰り返した。
少し下がった眉毛に細めの目を並行に描くことで、ぐっと似せることができたという。「癒し系で愛されキャラの雰囲気もうまく出せたと思います」。最終的に竹内も納得の仕上がりとなった。
宮城投手だけでなく全選手、表情にまでこだわっている。例えば、明るく元気な福田周平選手は口を大きく開けた笑顔に、対してクールな中川圭太選手は軽い微笑みに。それぞれの個性とキャラクターまでも引き立たせた。
◆「オリ姫の皆さんのおかげ」
早朝からBs SHOPに並び笑顔で購入するファンを見守りながら、竹内は感慨深げに語る。「このグッズができたのは、本当にオリ姫の皆さんのおかげなんです」
実は、製作コストや生産量の面でも越えるべきハードルが高いグッズだった。商品化の決断に4年の月日を要した理由はそこにある。昨年のオリ姫デーグッズの爆発的なヒットに加え、選手のぬいぐるみを求める声が数多くあったからこそ、満を持して製作に踏み切ることができた。
竹内は続ける。「ファンの皆さんのお声がいつも私の背中を押してくれています」。竹内にとってのエネルギー源は、SNS上でのグッズに関するコメント。余すことなく一つ一つチェックし、心に留めている。「これからもしっかりアンテナを張って、ファンの皆さんが喜んでくれるものを考え、形にしていきたいです」。引き締まった表情で語ると、竹内はBs SHOPに集うファンに再び目を向けた。
繊細にこだわり抜かれた「選手ぬいぐるみキーチェーン」には、担当者からオリ姫への感謝と真心が込められている。(西田光)