「地域の特産品を使った食べ飲み放題の企画を提案します」「ランダムで観戦球場が決まる『サイコロ切符』はいかがでしょう」「近くの観光スポットを巡るスタンプラリーを考えました」。毎年恒例の大学生による「マーケティングプレゼンテーション」が11月29日、阪南大学あべのハルカスキャンパスで開催されました。今年のテーマはファーム地方主催試合を舞台にした「スポーツツーリズム」。約60人の学生が、ファーム地方主催試合を中心に来場者調査と分析を行い、実現性も見据えた独自性あふれるアイデアを披露しました。
◆約半年かけて準備
マーケティングプレゼンテーションは、大学、自治体、バファローズが連携して実施し、今年で12回目。これまで「Z世代をオリックス沼に沈める方法」や「にわか女性ファンを増やす方法」など、さまざまなテーマに学生たちが取り組んできました。
今回は、大阪商業大、桃山学院大、関西大、大阪成蹊大、阪南大、天理大、大阪体育大の7大学が参加。各球場で来場者にアンケート調査を行い、この日の発表のために約半年をかけて準備してきました。その中から、特徴的な二つの提案を紹介します。
◆自転車の街・堺でサイクリング企画
「堺市のための地域密着型ツーリズム」を掲げたのは、桃山学院大。人間教育学部の視点から、女性のスポーツ離れや不登校児童生徒を取り巻く社会課題にも目を向けながら、くら寿司スタジアム堺で来場者調査を実施しました。
561人を対象に実施したアンケート調査では、「堺市で訪れたい場所・やってみたいこと」として仁徳天皇陵古墳が30%、和包丁づくりが18%、茶の湯体験が11%を占めました。これらの地域資源を周遊できる企画を検討しました。
地域の観光資源・特色をどう生かすかがスポーツツーリズムのポイントの一つ。そこで、学生たちは世界的自転車メーカーが堺市に本社を置いている点に着目。「自転車の街・堺の特性を生かし、地元の方々にサイクリングで堺らしさを知ってもらいたいと考えました」。試合日に合わせて仁徳天皇陵古墳や「さかい利晶の杜」など市内の名所を巡るサイクリング企画を提案。『歩いて乗ってオリまくれ!』と命名しました。
◆20代女性×ガチャガチャ×缶バッジ
萩谷総合公園野球場(高槻市)で調査を実施した関西大は、女性の来場者に着目しました。女性では20代が最も多く、二人組で来場するケースが多い点、そして、カプセルトイ市場の拡大や缶バッジ需要の高まりを踏まえ、「20代女性」「ガチャガチャ」「缶バッジ」の三つの要素を組み合わせた企画を考えました。
提案したのは、球場周辺のカフェや施設に缶バッジのガチャガチャスポットを設置し、来場者が巡りながら集める企画。「缶バッジ収集をきっかけに地域の様々な場所に訪れることで、『プチ旅行体験』ができます」。複数回の観戦や再訪の促進にもつながる点を強調しました。
◆「1軍公式戦にも応用できそうなヒント」
会場には、地域活性化や観光施策に携わる自治体職員の姿もありました。各プレゼンテーション後の質疑応答の時間には、実現を見据えた鋭い質問が寄せられました。「雨天時の対策や工夫は考えていますか」「地域とどのような連携を想定していますか」。学生たちは一つ一つ言葉を選びながら真剣に答えていました。
小学生の頃からバファローズを応援しているという大阪成蹊大の柴原羽那さん(19)は、「スポーツツーリズムと結び付けて考えることで、これまでとは違う角度からバファローズの可能性を探ることができました」と手応えをにじませます。続けて、「チームへの愛着や興味も、さらに強くなりました」と、微笑みました。
全大学の発表終了後には、球団広報宣伝部の花木聡プロジェクトマネージャーが講評。「プロスポーツを地域とどう結び付けていくかはスポーツツーリズムに限らず非常に大切な視点です」と前置きし、「今日出たアイデアは、ファームだけでなく、1軍の公式戦にも応用できそうなヒントが多くありました。我々の力で大阪をもっと盛り上げていければ」。笑顔で締めくくりました。(西田光)