元気いっぱいにグラウンドを動き回り、時には得意のダンスを披露するバファローブル。カメラを向けられれば愛らしくポーズを決め、時折いたずらっぽい仕草を見せるバファローベル。球場に姿を現せば、たちまち周囲を笑顔にする、バファローズ自慢のマスコットだ。
バファローブル&ベルは今年、誕生15周年を迎えた。リーグ優勝にあと一歩届かなかった2014年。無観客で開幕を迎えた2020年。そして、2021年からのリーグ3連覇。バファローズが歩んできた道のりには、いつもブルとベルの姿があった。ふたりの活動を支えてきたのは、球団エンターテインメントグループ(旧イベントグループ)の担当者たち。懐かしい写真と歴代担当者たちの言葉で、15年の足跡をたどる。
◆名前のない兄妹として誕生
ふたりの歴史は、2011年1月8日、新たなユニフォームや球団ロゴが発表された「新ブランド発表会」から始まった。
この日に新マスコットとしてお披露目されたふたりには、まだ名前がなかった。ホームページで一般公募が行われ、5328件の応募の中から、響きの良さや親しみやすさ、込められた意味などを考慮して選ばれたのが、「バファローブル」と「バファローベル」の名前だった。
◆おめかし姿から民族衣装まで
おめかし姿に浴衣、クリスマス衣装。ブルとベルはこれまで、多彩な装いでファンを楽しませてきた。その衣装の企画に特に情熱を注いだのが、誕生から2018年まで担当した濵田安耶香だった。
「裾の丈から生地の質感まで、すべてこだわっていました」
衣装はデザイナーのイラストをもとに製作会社へ依頼。帽子の飾りやスカートの生地にも目を配り、見た目だけでなく着せやすさも含めて調整を重ねた。浴衣は球団ロゴをあしらった生地を特注。帯を巻くのも濵田の役目で、巻き方にもさまざまなアレンジを加えていた。
時には大胆な変身もした。2013年の「大坂夏の陣」では、ブルが戦隊ヒーローさながらの「バトルモード」に。2018年の「インド・デー」では、ふたりがインドの民族衣装に身を包んだ。ブルの衣装はすんなり決まったものの、ベルが着用するサリーの準備は難航した。長い布を体に巻き付ける独特な衣装。現地の着こなしに近づけようと、用意された生地をもとに試行錯誤を重ねた。完成した姿は好評だったが、着付けも一筋縄ではいかず、濵田は「必死だったことしか覚えていない」と笑う。
( 2020年7月8日 Instagram投稿より)
( 2020年8月18日 Instagram投稿より)
( 2020年7月10日 球団公式HPより)
◆静まり返ったスタンドから
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、プロ野球は無観客で開幕を迎えた。当時ブルとベルを担当していた田岡佑香は、その時のことを鮮明に覚えている。
「スタンドにはブルとベルしか、応援する人がいなくて。本当にさみしい光景でした」
ファンの思いを、どうすれば選手に届けられるのか。考えた末に始めたのが、スケッチブックを使った応援だった。
「きょうもおりほーしたい!」「れんしょうするでー!!」。ファンの代わりに思いを書き込み、グラウンドへ向かって掲げるようになった。
ブルによるX(当時Twitter)とベルによるInstagramが開設されたのもこの年だった。ひらがなを基本にした親しみやすい関西弁で、球場や選手の様子を発信するようになった。
マスクに花やハートの飾りを付けるなど、感染対策にも遊び心をプラス。球団の提携病院である多根総合病院を訪れ、医療従事者に感謝を伝える活動も行った。
ファンと直接触れ合えない日々にも、ふたりはできることを探していた。
( 2021年10月27日 X投稿より)
( 2023年1月30日 X投稿より)
( 2023年9月24日 X投稿より)
◆SNSで歓喜の輪
「ゆめみたい…」「ぼくたちはじめてのことやから」
2021年10月27日、リーグ優勝が決まった夜にブルがXに投稿した。誕生から10年、ふたりにとって初めてのリーグ優勝。コメント欄には祝福の声が次々と寄せられ、ファンと喜びを分かち合った。
悲願の日本一をつかんだ翌シーズンには、ブルはSNSにこうつづった。
「みんな…ついに…ぼくたち…日本一のマスコットになりました」「ぜーいんがMVPやし、ぜーいんがヒーローやで」
当時担当していた諸戸清吾はこう振り返る。
「2021年の日本シリーズ第6戦では、凍てつく寒さのほっともっとフィールド神戸で、ふたりとも最後まで勝利を信じて待っていました。それだけに、翌年の日本一はふたりにとって待ち続けた景色だったと思います。ファンの皆さんときっと同じ気持ちだったのではないでしょうか」
SNSは、今やファンとの大切な交流の場。XとInstagramを合わせたフォロワー数は9万人を超え、ブルとベルは試合のある日もない日も、ファンとつながり続けている。
( 2025年12月17日 X投稿より)
◆初のファンミーティング
ファンの声は、新たなイベントの開催にもつながった。
昨年12月、ブルとベルにとって初めてのファンミーティングが開かれた。会場となった京セラドーム大阪のレストラン「スターダイナー」には、約50人のファンが集まった。
きっかけは、ベルによるハンドベル演奏。当初はSNSで演奏動画を公開する予定だったが、練習の様子をSNSで紹介すると、ファンから「生で見たい」「直接聴きたい」という声が寄せられた。
ベルは夏頃からハンドベルの練習を重ね、本番では8曲を披露。ブルもサポート役として加わり、兄妹でステージをつくり上げた。会場は温かい拍手に包まれ、初のファンミーティングは大盛況のうちに幕を閉じた。
( 2026年5月29日 Instagram投稿より)
( 2026年9月22日 Instagram投稿より)
◆ひょっとこ踊りにも挑戦
15周年を迎えた今年は、これまで踊ったことのないダンスに、ふたり合わせて15曲挑む企画を実施した。バレエからソーラン節まで幅広いジャンルに挑戦し、埼玉西武ライオンズのライナからリクエストを受けた「ひょっとこ踊り」にも取り組んだ。練習の成果は、マスコットショーやInstagramで次々と披露された。
現在の担当者・髙倉綾香は、今後への意欲を語る。
「ハンドベルもそうですが、新しいことに挑戦するたびに、ブルくんとベルちゃんはこれまでとは違った表情を見せてくれます。まだまだ私たちも気付いていない魅力があると思うので、ファンの皆さんのお声も大切にしながら、一緒に見つけていきたいです」
誕生から15年。これからもバファローブル&ベルは多くのファンに見守られながら、新たな挑戦を続けていく。(西田光)